京都大学 易化する入試問題への警鐘

どうもこんにちは。京都大学の今年度の物理の問題を前に完全に砕け散った高上物理講師うさぎです。

問題を見てみましょう。

まず、1問目の力学。

力学は、受験物理の中で最も難しい分野と言われている。波動や熱力学はある程度、問題のパターンが決まっているが、力学はパターンがたくさんある。そのために、大学側が力学でもっとも工夫ができる分野なのだ。

京都大学は、力学で「2つ以上の物体がお互いに影響を及ぼしながらの運動」が出されやすい。

今年は、2物体の運動+単振動がついた問題。京大の力学は、どのように運動がなされるのかよくわからない問題が多いが、今年の問題は、運動自体はとらえやすい。しかしながら、運動を正確に把握するのはとても難しい問題となっていた。

単振動を解く際に、運動方程式を書かずに解くという受験生も少ないと思うが、この問題に関してはきちんと2つの物体についてそれぞれ運動方程式をたてさらに、三角関数を使った一般形()で書き、経時的に運動を追っていく必要がある。

三角関数を使った形で書かず、エネルギー保存則の観点から、解くという人もいるだろう。そういった人には、この問題は解ききれないだろう。

この問題は穴埋めのパートでさえ、完答できた受験生は少なかったと思える。

第2問は、電磁気。

コンデンサー、コイルの回路にダイオードが加わった問題。ダイオードが加わったことで少し複雑になっているが、問題としては、今年の3問の中ではもっとも取り組みやすい問題であろう。

穴埋めのパートに関しては、京大の受験生であれば完答できないといけない。むしろ、ここで落としているようでは合格は難しいだろう。

第3問、熱力学。

前半は、単原子分子に関して、分子の運動エネルギーから内部エネルギーを求める典型的な問題。なので、京大を受験する学生であれば導出過程も結果も完璧に覚えてないで、受験会場にいるということは論外。前半の問題はしっかりと得点できないといけない。

後半は、二原子分子に関して、分子の運動エネルギーから内部エネルギーを求める問題。

この題材は、実は教科書にも発展として載っているものもあり、いままで入試問題にも出題されたことがあるために、難易度が高い問題集であれば見たことがあるという受験生もいたかと思う。なので、やったことがあるかないかで、点数に大きく差が出たであろう問題だ。

全体を通して言えることは、今年の京大の物理は京大らしくない。

特に力学に関してはその傾向が強かった。高校物理の物理において運動方程式の重要性は低い。運動方程式をたてずに、エネルギー保存則を使う受験生も多いだろう。そして、そういった解法を推奨している参考書や問題集なども少なくない。特に単振動に関しては、その傾向が強い。京都大学の力学もそういった解法が解けるような、運動方程式をたてなくても解けるような問題が多かった気がする。

ただし、今年の問題は運動方程式をたて、小球2つに関してそれぞれたてて、それを連立することで重心系の運動も見やすくなり解きやすかった。

ある意味、京大対策を行ってきた受験生にとっては解きにくい問題となっていた。

電磁気についても、なにやらΔがたくさん出てきて、なんとなく微分積分を想像させる。東京大学は、電磁気では微分積分をつかって解くような問題が出されてきたが、京都大学はあまりそういった問題はあまり出されてこなかった。今回のこの問題も微分積分を使わなくなくても解ける問題だったが、出題者側は、微分積分を意識していることはひしひしと伝わる。

最後の熱力学もまた京大らしくない。京大の熱力学は、設定がとても複雑でキチンと時間を追って状態を追跡していかないと間違えてしまうような問題が多かった。しかし今回の問題は、計算が面倒くさいものの、題材は京大を受験するような学生であれば見たことがあるような題材で、教科書にも載っている。私自身、駿台の市ヶ谷校に通っているとき、物理の授業でこの題材を講師が説明してくれたことを覚えている。この第3問は、やったことがあれば解けたといえるような問題で、合否を分けたと思われる。

今年の問題は京大らしくない問題が多かった。受験において問題が昔より簡単になってきていると叫ばれている。そしてまた○○大学らしい問題という言葉がよく言われる。今年の京大からのメッセージはこういった傾向への警鐘ではないだろうか?来年度から入試制度が変わる。それに惑われすぎてはないか?受験の本質はなにか?東大の問題を分析し、東大の問題を予測してそれに備えることなのか?京大の問題を分析し、京大の問題を予測してそれに備えることなのか?

東大に受かればいいのか京大に受かればいいのか?そういった勉強をしていないか?

勉強を本質的に学べというメッセージではないだろうか?

今年の京大は、化学も難しかったときく、ただでさえ難しい京大化学。京大の理科に逃げ道などない。逃げずに立ち向かえ目の前に出された問題がどんな問題であれ、立ち向かえるような勉強を日々せよ。教科書レベル基礎レベルから足元を固めろ。そういわれた気がした。

私は実際、今回の問題は力学を解ききることができなかった。京大らしくエネルギー保存則を使うのだろうと思っていたら、泥くさい計算が必要だった。解答をみてもどうやって解くのかわからず、完全に力負けをした。全体的に計算が複雑でこんなの物理でやらないよと思うような計算もままあった。しかし、高上ではこのような理科の問題も自力で解き切り、高い視点から解説できるマスター講師が存在するので、ぜひ理科で後れを取りたくない生徒はこれを機に体験指導を受けてもらいたい。

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