いかに崩すか。2020年 京大 理科~物理と化学で8割を狙う~

みなさん。はじめまして。高上の新たな理科講師になりました、こーたです。

今回の2020年の京都大学の理科は、物理、化学ともに非常に難しく、8割とるのは至難の業。医学部以外、多くの受験生が半分もとれずに合格できているようです。

ただ、高上は医学部専門の塾。医学部を目指す場合、最低7割、できれば8割はほしいところ。

そこで私が本番と同じ形式、3時間で物理と化学をどのように解いて、どのような数式処理をし、どの問題を捨てたのかをここに記録します。

ぜひ参考にどうぞ。全部の問題・解答は、各予備校などから入手ください。

① 物理1 見た印象は、典型的な「二体問題」。ただし、普段から運動方程式の意味を考えていないとエの後の問題は手につかない為、ここで差がついたかと思います。

 さてオとカですが、「重心運動」と「相対運動」に分けて考察を深めています。

 オに関しては問題文さえ読めていれば、小球1の速度が0とわかり、小球2の速度も単振動の力学的エネルギー保存則ですぐ求まります。またカに関しても、なぜ重心と相対で考えるのかを理解すればすぐに答えが導けるでしょう。

 一方でキはこの場ではすぐにはわからなかったので飛ばしました。(1)で15分。

(2)はスラスラ最後まで解きましたが、ケとコの2箇所を間違えました。糸が張ると速度は交換することを失念。サは典型問題で、シとスは0しか文章上入らないので省略。セも言われた通りにエネルギー保存則を2つ立てるだけ。

そして難問と評されている問1。しかし、そこまで難しいでしょうか?

時刻T’までは小球2のみ、-v’に向けて等加速度運動をし、衝突直後に速度が入れ替わって1は単振動(正弦波)、2は加速度運動を続けることさえわかれば30秒で描くことができますので、ぜひ解答したいです。ここまでで30分、正答率7割5分。

② 物理2 コンデンサーの過渡現象に着目した問題。(1)は非常に典型的な問題なので5分。(2)も問1以外は誘導に従えば迷う余地がないし、ここまでは公式を丸暗記するだけで解くことが可能です。また、(3)も記号は誘導に乗るだけで実は埋まります。ここで既に7割5分。つまり問1さえ解けば、時間的に余裕を持って8割以上を確保できるため、鍵となるのは問1です。

 

実は、問1は保存則を用いない方が計算は早いです。式から単振動と見抜くことで答案に書く前にVの値が求められ、グラフの概形がわかってしまいます(上の赤で示した式)。実際に答案に書くときは保存則の式だけ立てて、その直後に解いたふりをすれば良いですね。安定した8割解答への近道となる時間短縮です。ここまで20分。問2と3はぱっと見で時間がかかりそうなので捨てました。

③ 物理3 気体分子運動論の複雑なパターン。計算は煩雑ですが、途中の近似式などのおかげで寧ろ計算ミスが抑えられる構造になっているので、何とか食らいつきたいです。

あ〜お は典型的な問題なので8分。一番簡単な立方体のパターンを、誘導0で導出する練習を積むことが大事です。さて、自分は解いていて か の解答がぱっとわからなかったので、一旦飛ばして き〜け へ行きました。8割を目指すなら、ここが鍵です。後を見ると計算量が少なそうなので、15分ほど時間を使いました。

ここの3問は、もはやただの算数の問題です。こういうところは演習量が露骨に正答率を左右するため、苦しくても、普段から自力で解き切ることが重要です。あとは誘導に従って さ まで埋めることで、し の答えは誰でも5/3とわかるので、ここから か を2と解答できます。最後に、問2は式だけならばすぐに立つので式だけ立てて計算は飛ばし、物理を終了しました。結果として、全体で8割以上を確保できました。ここまでで30分。合計すると、物理では80分解いた計算です。

ここからは化学に移ります。

化学1 (a)化学平衡および(b)結晶格子の問題。平衡の問いは頻出かつ比較的標準的であるため、どんどん解き進めて行きたいです。

(a)コまでは誘導に従うだけで得点できます。8割のためには、サが鍵です。

ここの赤の式を自力で考える必要があります。この式は大学の講義ではかなりポピュラーな化学種保存の式ですが、当たり前ではない受験生は苦戦を強いられます。そのため、時にはアカデミックでの考え方を身につけ、短時間で高得点を取ることが必要でしょう。

なおこの問題は文章を読み込むと赤の式の導出を阻害する解釈にもなっています。各予備校でもおかしいのではないかという指摘がされておりますが、そのような事態にも混乱せず対応できるよう、この当たり前を演習で感じ取れるようになる必要があるでしょう。

(b)普段あまり問われることのない問で、難易度が高いです。今回の場合は図1を見るより、普段の単位格子を想像した方が解きやすいですね。

 

図の赤が四面体、青が八面体空隙です。四面体の方は内部に後7個あります。八面体は、各辺のところにも1/4ずつ空隙があるので、全部で12/4 = 3個、別に存在します。

問4は想像が難しいので飛ばしました。ここまで20分。

化学2 (a)蒸気圧、(b)圧平衡の問題。

(a)某予備校の分析で意味がないと酷評されています。理由は簡単で、実験的意味よりも受験生を引っ掛ける意図で出題しているとしか思えないためです。

(京都大学 令和2年度化学より)

わざわざ塩化ナトリウムと塩化カルシウムの混合物を溶質として使い、さらに事前に混ぜずにバルブを閉じてから内容物を溶かしています。これでは、むしろ実験する上ではガラス容器の体積などによる誤差や、不均一な混合の可能性が増加してしまうわけですね。

そして、そこまでしてバルブを閉めた状態で溶かしたにも関わらず、バルブを開けてしまいます。結果として異常に問いが複雑となり難解となり、多くの受験生が解答を間違えた結果、このような講評になったのでしょう。

問題を作るだけなら誰でもできますが、適切かつ明確な問いにするのは難しい、と言うわけです。

自分も少し考えましたが、複雑なので飛ばしました(問1、3は平易なので、得点しないと落ちますが)。8割を取る上では、このような悪問を意地になって解き続け、ペースを乱されないことが重要です。

(b)こちらは比較的解きやすいです。問7(ii)まで解き、25分。とりあえず問題3へ。

化学3 構造決定。分子式はすぐにC19H24O6と求まるため、あとは3つのエステル結合をどのように分配するかを考えるだけです。化合物E、G、Hは京大にしては非常に解きやすいので、そこから逆算を仕掛けます。DとCの情報から組み上がり、最後にAとBでとけば、20分で全て解くことができます。ここは満点が欲しいですね。

化学4 糖類の問題。問1はきちんとフィッシャーマン投影式を立体に戻して考えれば得点できます。問2も、(i)は誘導さえ見ればわかります。(ii)は難しそうなので一旦飛ばし、時間さえあれば解ける(iii)を冷静に解答しました。ここまでで15分。化学も80分経過した計算です。

残りの20分は、計算ミスの確認や、飛ばした問題の確認に当てました。これで、最終的に8割強の点数を取ることができました。

最後に、今年の理科の講評です。

物理:全体的な難易度としては、非常に高いと言って良いでしょう。その最大の要因として、異常な計算量と微積への深い理解が前提となっていることが挙げられます。京大合格のためには、日頃から物理現象を式で追っていく意識が肝要です。

化学:物理よりはまだ全体的に簡単でしたが、特に問題1、2の問題設定の曖昧さ・煩雑さのため、どうしても高得点が狙いづらい内容でした。誘導にただ乗るだけでなく、なぜその誘導なのかを日頃の演習で理解する必要があると強く感じました。

最近の京大は、従来は丁寧な誘導があった大学レベルの見方・考え方も要求し始めているように感じます。しかし、きちんと自分の手で演習を積み、闇雲に問題を解くだけでなく、その意図を理解することで高得点を狙えますので、受験生の皆さんは、ぜひその意識を大切に解いていただければと思います。

それでは。

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